木村 好子

落葉よ、落葉よ、
秋風に吹かれて、
お前がカラカラと鳴り乍ら
井戸端に水すすぐ私の手元へ、黄色く、
舞いこんでくると、
おお、私は胸ふたがれる!

何一つもたらすことなく、
過ぎ去った日の一日一日を
ただ、えいえいと
つづれつくろい、米かしぎ
凡ての希みも、よろこびも、
かなしみさえもおき去りにして
生涯をただ貧しく終えゆく無数の私らの生命のように、
ああ、お前は散ってゆく、
秋風になぶられて、舞い乍ら……

すそを吹き上げる
北風は凍り
おおいのない、野天の井戸
洗い物をしぼる手はまっ赤
お前は温順
お前は過去の女
ぱっと冷いしぶきがとびかかる
私は空を仰いだ
くらくらと瞼をおおう
おもい冬空

生活はつづく
新しいものと
古いものが
ごっちゃになってどんでんがえり
新しいモラルの前では
或る女たちが特権を以て針を折り
ひしゃくを投げすて
昨日のくびきをふりほどく

ぷんとにおって来る力強い体臭!
おお この汚れ物のにおいこそ
獄内の闘いのはげしさを語る
あの人達の生々しいいぶき――

さあ みんな 元気で初めよう
あたしはポンプ押し
千代ちゃんはすすぎ役
みんなそろって
ごし ごし ざあざあ
うらみをこめて洗い流す
奴等のテロルに汚された垢を油汗を

空は秋晴れ
あつらえ向きの洗濯日和
なかでがんばる同志達に
せめて小ざっぱりした物を着せるため
妾達の胸はあつく腕に力はこもる!